牡羊座のおはなし
昔々、あるところに天の川に住まう一匹の羊がおりました。
天の川には、いたるところに星が落ちています。
羊はそれを足場にして、ぴょんぴょんと川を行き来していました。
ある時羊はうっかり河原に近いところで足を踏み外してしまい、岸辺のワニにかじられ毛皮を奪われてしまいました。
たまらず陸に逃げ込みもがいていると、近くに住む女人が見つけて手当てをしてくれました。
彼女が薬を塗ると、前よりも頑丈な毛が生えてきました。
それはくるくるの巻き毛で、それにつられてか頭の角まで巻くようになりましたが、ささいなことです。
羊は深く感謝して、そこに住まうようになりました。
彼女はここで機を織り暮らしていますが、川向こうの男と恋仲でした。
季節ごとに渡る鳥に手紙を託しては、返事を大事そうに読んでいます。
羊は恩返しのために、彼女を乗せて川を渡ることにしました。
ぴょーん、ぴょーんと、星を蹴って羊は跳んでいきます。
ワニが再び現れてそのおしりにかじりつきましたが、新しい毛皮は金属のように頑丈で、ワニの歯を折ってしまいました。
無事に2人は対岸に降り立ちました。
彼女の恋人はというと……いつからか彼女の紡ぐ美しい糸のおくりものを売り払って、小屋で寝ころんで歌を詠みだらだらとその日ぐらしをするようになっておりました。
激怒した彼女に追い立てられて、男は川へと漁に出るようになりました。
彼はワニを恐れていますが、実はワニの歯がとっくに折れてなくなっていることは内緒です。
半泣きで漁をする男の声を聴きながら、羊は庭先であくびをしています。
丈夫な羊の毛を糸にした彼女の織物は、ますます評判となっていきました。
男がさぼらないよう時折様子を見に行く彼女を乗せて、川をぴょんぴょん渡るのが今の羊の仕事です。
その姿は、今でも季節が巡るたびに空に見えるでしょう。