月の満ち欠け

 天には太陽の神と月の女神がおりました。
月の女神は兄の太陽の神が休む間、天を預かり生き物たちを休ませ育てるのが役目です。
ただ、どんな偉大な威光も遠く離れれば蔭ります。
遠く北の土地では日の光が届かない時があり、女神は空を支えましたが、疲れて低い場所から一日中空を照らしておりました。
大地は近く、様子がよく見えます。
高い崖にはすぐ手が届きそうでした。
まだ幼い女神は、兄の手の届かぬこの面白そうな土地に興味津々。
ある日気まぐれに狼に姿を変え、崖の上に降り立ちました。
すると、小さな同胞の鳴き声が聞こえました。
駆け寄ると怪我をした子狼がうずくまっています。
女神が傷を舐めると傷はたちどころに治癒し、二匹は雪原で遊びました。

 楽しい時間はあっという間に過ぎ、女神は務めを忘れていました。
そして、子狼は女神にふさわしい相手になろうとして、いつしか女神よりも大きく強く育っていました。
月の恵みがなく嘆く生き物たちの声に気づいて兄の太陽の神が探しに来ます。
遊びほうけている幼い妹と、大地を覆わんばかりに育った巨狼を見て、兄は激怒しました。
狼を捕まえると檻に入れ、日の光から最も遠い世界の果ての暗闇に置き去りにしました。
女神は悲しんで、ふさぎ込んでしまいました。
かえって女神のお努めはおろそかになり、太陽の神はしぶしぶ月に一度だけ狼に会いに行くことを許可します。

 こうして女神はお努めをしながら月に一度、世界の果てまで遊びに出かけるようになりました。
女神が果てに向かうほどその姿は小さく欠けてゆき、狼と遊んでいる間は月は姿を隠してしまうのです。
これが月の満ち欠けのはじまりと言われています。